花と神話~ノコギリソウ
トロイア戦争たけなわのイ―リオス城近くの戦場では、朝から激しい戦いが繰り広げられていました。いつ終わるとも知れない戦いで多くの死者や怪我人が出ていましたが、敵味方を問わずその名を讃えられていたギリシャの名将アキレウスのその日の戦いぶりは特に目覚ましいものがありました。アキレスウスは鍛冶の神ヘーパイストスが鍛えた鎧を身に着けやはりヘーパイストスが作った投げ槍を手に持って闘っていました。
その日、「今日はトロイアの兵隊100人を討ち取るぞ。」と神に誓っていました。そして日没までに99人の敵を討ち取りました。100人目の敵に出会った時、その人物は装いからみても戦いぶりからみても有名な武将に違いないと思いました。両者とも力の限り闘い、ついにアキレウスが勝利を収めました。
敵将の兜をとったアキレウスは驚きました。それは色白で金髪の女性だったのです。彼女はアマゾン国の女王ペンテシレイアでした。ペンテシレイアはもと老王プリアモスに殺人の罪を清められたからとも、亡命していたときに世話を受けたからとも言われていますが、ともかく恩義を感じていました。
ですから、トロイア戦争の勃発を聞くと、同盟国トロイアを助けるために女ばかりからなる軍隊を率いてこの戦場にやってきたのでした。彼女は常に軍団の先頭に立って全軍を激励しながら勇敢に戦ったといいます。彼女は「当代随一の英雄であるアキレウスと戦い、その雌雄を決するのだ。」誓っていたといいますから、彼と戦い敗れたことはむしろ彼女の望みだったというべきかもしれません。
アキレウスは、自分がこれほどまでに美しいアマゾン国の女王を殺してしまったことを悔やみました。そこで、彼女の亡骸を手厚く葬り冥福を祈るとともに、神に「アマゾン国の女王の魂を花に宿らせたまえ。」と祈りました。その願いは叶えられ、彼女は花に変わりました。
そしてその花はアキレウスに因んでアキレアと名前がつけられたと言われています。今ではこの花はノコギリソウの仲間をさすものと考えられています。ノコギリソウの花ことばは「戦い」です。