花と神話~バラ

美の誕生
バラの誕生はその姿に相応しくアプロディーテの誕生と関係があります。
アプロディーテはホメ―ロスによればゼウスと大洋神の娘ディオーネとの間に生まれたということになっていますが、ヘシオドスによれば、最初に世界を支配したウラノスの生殖器をクロノスが切り取って海に投げ捨てたとき、その血と海水が混じってできた泡から生まれたことのなっています。その名前のアプロディーテは「海の泡」(アフロス)からきているととも言われています。

アプロディーテが生まれると、西風の神ゼピュロスがキュテーラに、その後キュプロスに運んで行きました。そこで季節の女神ホーライたちが、アプロディーテを飾り立てオリュンポスの神々のところへ連れて行ったのです。そのとき、神々はこの世で一番美しいバラの花を想像して彼女の誕生を祝ったとされています。

一説には、アプロディーテが泡から生まれるときに、バラも一緒に生まれたとも言われています。

アドニスのもとへ
バラの花は何故赤いのでしょうか?

愛するアドニスが死んだとき、アプロディーテはキュプロスを旅している途中でしたが、彼の悲鳴は遠くキュプロスまで届きました。急いで彼の処へ戻ろうとアプロディーテは茨を踏みつけ、鋭い角のある岩も気にせずその上を走っていきました。その途中で白いバラの花を踏みつけてしまい、彼女の足血が流れ花びらの上についてしまいました。するとみるみるバラの花は赤くなりました。そのときからバラの木に赤い花が咲きだしたということです。

一方、赤いバラの花が咲き始めたのは、女神の血で白バラが赤くなったのではなく、アドニスの死を悲しみ、アプロディーテが流した紅涙に白バラが赤く染まったという説もあります。

また、アプロディーテが森で狩りをしているアドニスのところへ神酒ネクタルを運んでやったことがありました。女神が馬車を降りたとき、たまたまそこに生えていた白いバラの刺を踏んで女神の足から血が流れ出し、その血がバラを赤く染めたという話も伝わっています。
赤いバラの花言葉は「愛情です。」

アプロディーテの浮気
バラとアプロディーテの深い関係を示す物語はたくさんありますが、この物語もその一つです。

美の女神アプロディーテはゼウスの命令で足の不自由な鍛冶の神ヘーパイストスと結婚しました。ゼウスが自分の頭からアテナを生み出したのを見たヘラが自分一人で産んだ子がヘーパイストスだと言われていますが、あまりに醜かったのでヘラは彼を疎み、ついには捨ててしまうのです。しかし、その後鍛冶の技術を学んだヘーパイストスは鍛冶の神となりました。

醜い夫が嫌になったのか、いつしかアプロディーテは、たくましい姿の軍神アレスに惹かれるようになりました。夫が仕事に出かけると二人はひそかに会って、楽しい時を過ごしていました。しかしその現場を我が子エロスに目撃されてしまったアプロディーテは、噂が広まるのを恐れ、沈黙の神に頼んで息子の口を封じてもらうのです。おかげでアプロディーテの浮気は知られることがなかったので、そのお礼に紅いバラを沈黙の神に贈ったのだと言われています。

慌て者のエロス
バラが生まれた時のエピソードはいろいろあります。その中の一つに次のようなエロスが主人の話があります。

オリュンポス山頂での会議に出るため急いでいたときのこと、生まれてつき慌て者だったエロスは足元よく見ないで走っていて、何かにつまづきました。そして手に持っていた神酒ネクタルをこぼしてしまったのです。地面にこぼれた神酒がバラになったということです。

また、ある日エロスがバラの花を摘んでいたときのこと。バラの花があまりにも美しいのでキスをしようとそっと顔を近づけました。ところが、その花の中にミツバチがいたのです。飛び出してきたミツバチはエロスの唇をチクリと刺しました。息子がハチに刺されたことを聞いたアプロディーテは激怒し、ハチをたくさん捕獲させると、エロスが弓の弦に数珠つなぎにしましたが、それでもアプロディーテの怒りは収まりません。今度はハチの針を抜くと、エロスがケガをしたのはバラのせいだからと、茎にそれを植え付けました。これが、バラにトゲができた理由と言われています。

 

 

 

 

花と神話~バラ” に対して2件のコメントがあります。

  1. SugimotoChieko より:

    「バラの神話」としてまず「美の誕生」=「アプロディーテ(=アフロディーテ)の誕生」が話されています。
    それ以外も全てバラの神話です。知らないエピソードがたくさんありました。

    特に最初の「アプロディーテ」は知っているはずなのに、「アフロディーテ」と思い込んでいて、?と思いすぐさまネット検索。
    正式名:アプロディーテ。アフロディーテで通用しているそうでした。

    だけど、「ホタテ貝の貝殻の上に誕生した」のは、「ヴィーナス」でなかったっけ。ボッティチェリの絵画ははっきり覚えています。また?です。
    そこでついでにヴィーナスとの関係も検索。

    ギリシア神話がローマ神話に移り、アプロディーテの名前がヴィーナスとなっただけで、同一神とのこと。

    ややこしい!
    花の話題がなければそう簡単には読めないのがギリシア神話です。
    ギリシア神話・ローマ神話・北欧神話・・・それぞれがヨーロッパ文明の根源をなしているそうなので、・・・・

    それで、せっかくネットで調べたので、「ギリシア神話」の説明文を拝借して転載しました。    Sugimoto Chieko
    __________________________________

    ギリシャ神話は、古代のギリシャ民族によって伝承された、天地創造と神々・英雄たちの愛憎劇です。

    ギリシャ人の基礎教養であるとともに西欧における精神的な支柱となっており、その影響は哲学や思想、芸術、宗教などの多方面に及んでいます。

    物語は紀元前15世紀頃から口頭で伝わり、ホメロスやヘシオドスなどの叙事詩人によって体系化されました。そのうち二大叙事詩である「イーリアス」と「オデュッセイア」は、口承形式の神話における最高傑作と評されています。

    ギリシャ神話は欧州人のインスピレーションの源泉であるため、欧州の文化や価値観を理解するために不可欠なエッセンスといえるでしょう。

  2. kumanozakura より:

    詳しいコメントありがとうございます。
    内容は筆者が説明を加えようかと迷ったことで、代わりに解説していただき大いに助かりました。

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