花と神話~ミント(ハッカ)
冥界の王ハデスは、地下での仕事に忙しくよほどのことがない限り地上に姿を現すことはありませんでした。
ある夏の日、久しぶりに地上に姿を現したハデスは、咲き乱れる花の美しさに見とれていましたが、花々よりももっと魅力的に見えたのは久々に見る地上の美しい娘たちでした。
たまたまその場を通りかかったのが、美しいニンフのメンテーでした。ハデスはその美しさに我を忘れて、思わず彼女に抱きついてしまったのです。
ところがそこに突然、后のペルセポネが姿を現しました。二人の様子を見たペルセポネは、嫉妬に狂い、メンテーを蹴飛ばしたのです。それでもまだ怒りの治まらないペルセポネは、メンテーを何度も踏みつけました。メンテーはたちまち香り高い草に姿が変って、ミント(ハッカ)になったといいます。
この神話が生まれた背景はいろいろあって、まずハデスの神殿がエーリスのメンテー山にあったこと。ハッカはギリシャ語ではミンテーであること。葬儀の時に屍臭を消すためにミント(ハッカ)が用いられたことなどがあげられます。ハッカの花言葉は「美徳」です。