有用植物利用法(53)~三大香木・四大香木~
「三大香木」とは、春・夏・秋それぞれの季節に香りの強い花をつける樹木のことをいい、「三大芳香花(さんだいほうこうか)」や「三大芳香樹(さんだいほうこうじゅ)」とも呼ばれています。
*春は、沈丁花(じんちょうげ)
甘い香りで春を感じさせてくれる沈丁花
「沈丁花」という名前は、香木の沈香(じんこう)のような芳しい香りで、十文字の丁子(ちょうじ)のような花をつけることから名付けられました。原産は中国で、室町時代に日本に伝わったといわれています。
枯れてもなお良い香りがするため、「沈丁花は枯れても香し(かんばし)」ということわざがあり、もともと良いものはたとえ盛りが過ぎても値打ちがある、ということを例えています。
沈丁花の花言葉は「栄光」「不死」「不滅」「永遠」
*夏は、梔子(くちなし)
甘めの強い香りが特徴の梔子
梅雨のころに白い大ぶりの花を咲かせ、遠くでも感じられる甘めの強い香りが特徴です。梔子は秋にだいだい色の実をつけますが、実が熟しても口を割らないことから「口無し」と名付けられたといわれています(諸説あり)。漢字では「梔子」「山梔子」「支子」などの表記があります。
梔子の実は、古くから染料として利用されてきました。奈良の古墳から出土した繊維に梔子の色素がみられたり、平安時代の十二単に「梔子色」が使われているほど歴史は古いです。
また、食べ物の着色料としてもお馴染みで、たくあんや栗きんとんの黄色は梔子の実で染められてきました。おもしろいのが梔子の実の成分の処理のしかたで、赤や青の染料にもなることです。ひな祭りの菱餅の赤い餅は、梔子で染めたのが始まりです。
梔子の花言葉は「とても幸せです」「喜びを運ぶ」「洗練」「優雅」
*秋は、金木犀(きんもくせい)
芳香剤としても人気の金木犀
オレンジ色の小花をたわわにつける金木犀は、白い花をつける銀木犀(ぎんもくせい)が原種で、樹皮が動物の犀(さい)の皮に似ている木という意味の「木犀」に、花の色から白は「銀木犀」、オレンジは「金木犀」になりました。
その香りの良さから芳香剤としても活用されていますが、かつてはにおいを軽減するため、トイレ付近に金木犀を植えることも多かったほどです。
食用にもなっており、中国では金木犀を「桂花(けいか)」と呼ぶので、白ワインに漬けた「桂花陳酒」や、お茶にして飲む「桂花茶」が日本でも人気です。金木犀の花を砂糖漬けやシロップ漬けにしてもおいしいです。
金木犀の花言葉は「謙虚」「気高い人」「真実」「陶酔」
*冬の蝋梅(ろうばい)を入れると「四大香木」となります。
まるで蝋をかけたような質感の蝋梅
春の沈丁花、夏の梔子、秋の金木犀の「三大香木」に、冬の蝋梅を入れて「四大香木」と呼ぶこともあります。
冬に黄色い花を咲かせる蝋梅は、旧暦12月をさす「臘月(ろうげつ)」に、梅の花に似た花を咲かせることや、その花がまるでロウソクの蝋をかけたような質感なので、「蝋梅」という名前になったといわれています。
花の少ない冬に咲き、とても良い香りがします。中国では、梅、水仙、椿とともに、「雪中の四花」として尊ばれています。葉は開花前にほとんど落ちてしまいます。
蝋梅の花言葉は「慈しみ」「ゆかしさ」「先導」「先見」
ソフィア