花と神話~ヒマワリ

太陽神アポロンの愛を拒絶した娘は多くいましたが、アポロンに恋焦がれた乙女も多かったのです。しかしそのほとんどの場合が、報われることのない愛でした。神は不実でしかも気まぐれだったからです。そうした娘は悲しみのあまり様々な植物に姿を変えていったのでした。

大洋神オケアノスの娘で水のニンフ、クリュティエはアポロンを愛していました。しかしそれは娘の片思いだったのです。叶わぬ恋を嘆き悲しむクリュティエは一日中髪の毛を振り乱し、地面に座り込んで泣いてばかりいました。食事もせず飲み物も取りませんでした。ただ自分の流す涙と冷たい露だけが彼女の食べ物だったのです。

恋する太陽神アポロンが日輪車に乗って東の空に昇ってくるのをひたすら待ち、天の道を走っていく姿を目で追いかけるだけが彼女の日課でした。他のものには目もくれず、ただひたすらアポロンの姿だけを追いかけていたのです。とうとう彼女の足は地面に根付いて動かなくなり、顔は花に変わってしまいました。彼女はヒマワリになったのです。

今でもヒマワリは太陽が動いている間、いつでも太陽を見ているかのように花を回転させています。こうして花となってもクリュティエは恋しいアポロンを追い求め続けているのです。

ヒマワリは16世紀末頃ヨーロッパに入って来た植物ですから、ギリシャ神話に現れるはずはありません。これはもともとキンセンカに変身する物語だったものが、いつの間にかヒマワリの伝説に変わってしまったものと思われます。

また、この花はヘリオトロープだとする話もあります。ヘリオトロープはギリシャ語で「太陽に向く」という意味です。また、花言葉は「献身的な愛、私はあなたを見つめる」「夢中」「自己の放棄」「激しい執着」などこの物語に由来すると思われるものがいくつかあります。

 

 

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